>Requiem

その69・・・「見えてくるもの」・・・・

震災当時、リクはもうすぐ幼稚園で、マシンはおしめがとれるかとれないか
どちらにしても乳児ではなかったので、ミルクや離乳食やおしめの心配を
しなくても済んだので、良かったなあ・・と思っていました。

あれから10年がすぎて、今年はリクが高校受験
そうなのです。きっと当時が大変だったのは乳児だけではなかったはずなのです。
その頃は、そんなことまで思いも寄らなかったのですが
ちょうど1月と言えば、入試秒読み、本番・・どちらにしても
親子共々、受験を迎える立場としては正念場
そんな時期に、あの震災、そして遅々として進まない復興

受験生の中には、家を失った子もいたでしょう
あるいは家族を失った子もいたでしょう
避難所で、生きていくだけで精一杯だった人たちの中で
受験に立ち向かっていたんでしょうか

それほど被害に遭わなかった子ども達だって
感受性の強い年頃で、被災地を間近に見ていれば
心も揺らいだことでしょう
どうして自分達だけが、と運命を呪った事もあったでしょう

今こうして、水や食べ物や、寝る場所の心配をしないで
勉強が出来る環境があるだけでも、幸せな事なんですね

人間そういう立場になってみないとなかなか
見えてこないモノが、たくさんあるんだなあと
しみじみと思いました。

あの時病気だったなら、あの時介護の必要なお年寄りがいたら
あの時身体が不自由だったら、あの時・・・
人は想像力で優しくなれますよね




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